n63girl's diary

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ごく個人的なこと

ミッドサマー

「ミッドサマー」(アリ・アスター監督)を観てきた。

観ることになった決め手は「いい意味で最悪だった」という感想を見たからだ。好物の匂いがする。

絵面はきれいで明るくて、これに惹かれて興味を持つ人もいそう。そして内容がひどいというギャップもこんなに話題になってる理由なんだろうか。

 

ホームページはこちら。

https://www.phantom-film.com/midsommar/sp/

 

しかし、観終えた今となってはどうしてこんな作品を大勢の人か観にいくのか理解できない。観に行った劇場は満席だった。次の回も売り切れてた。は???みんなそんなに精神をすり減らしたいの?????あほなの?????

 

 

以下、ネタバレしない感想

 

 

ミッドサマー(midsommer)というのは夏至、または夏至祭という意味だ。

主人公ダニーとその彼氏クリスチャン、クリスチャンの友人たちが共に彼らの博士論文の調査のためにスウェーデンの奥地の村で90年に一度開かれる夏至祭に赴く。夏至の時期は太陽が一日中沈まない白夜の時期。一日中青い空のもとで豊かな緑と花が咲き乱れる美しい景色です。そんな村でいろんなことが起こるのですが、そのせいでこの映画はR15+指定です。

 

この映画がホラーだとかホラーじゃないとか言われてますが、個人的にはホラーというには怖くなくホラーじゃないというには怖いと思った。びっくりもしたし、音楽も映像も不穏なシーンが続くことはある。けど後で何か特定の出来事が怖かったり夢に見たりするほどではないかな。

 

ただしグロい。でも実はグロよりも個人的にこたえたのはエロシーンでしょうか。あれは酷かった。最も胸糞悪いのはあの濡れ場でした。

グロ耐性はあるのでまあ大丈夫だった。何回かグロいのですけど、内臓が露出するのとかは平気なんだな。それを見る人の反応とか、そこに至る過程とか、暴力性の発露のほうが苦手だった。まあ概ね許容範囲でした。

 

作中ほとんど胸糞悪い状態で進みます。手汗が止まりません。精神がごりごり削られていくのがわかるようです。

ですが見終えた後は、爽快というのか、わたしは笑いが止まらなくなっていました。この映画、ずっとダニーの一人称視点で描かれますが観る時もそう思って観たら楽しめるんじゃないだろうか。終盤になるにつれダニーには変化があります。そのダニーの様子が肝ですね。

 

あと個人的には音楽とダンスもツボでした。スコティッシュってアイリッシュと近いのかな。生演奏にのってみんなで踊るシーンで流れてた音楽は作品の雰囲気に沿って怪しげな旋律ではあったけどリズムはケルト風のダンスチューンでテンション上がりました。楽器は大きいバウロンみたいな太鼓とか、フィドルとか、あとニッケルハルパは見えた!

 

 

わたしはこの作品は好きです。好印象です。

もう一回観てもいい。ただし疲れていない時に…(笑)

個人的によかったポイントは、たぶん多様な在り方を認める、異なる文化を許容することあるいは許容することなどできないという主題ですね。ネタバレになりそうなのでこの下で語ろうと思います。

 

 

 

 

 

以下ネタバレ含む話

 

 

 

 

 

 

 

 

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映画が伝えたかったメッセージは何か、結構考えながら観るのですけど、この映画に関してはひとつに定まらないように思います。見る側に委ねられているというのか。それで見た後なんとなく映画の全体像がつかみどころなく感じられたのかなぁ。

 

どうして良いと思ったかで言うと、やはりダニーがあの村に帰化することがダニーにとっての幸せだと思われたからです。

村の風習は常識的に考えたら異様なものです。村全体が家族として機能していてプライバシーは無さそう。生殖の相手はえらい人が計画し決める。時おり意図的な近親相姦によって異形児をつくり出し聖書を書く役割を与える。老人は72歳になったら自ら命を断つことで一生を終える。その時に死に損なうのは悲しいこと(?)であって死に損なった人には村の人間がとどめを指し、安堵するのだ。

 

ダニーはアメリカでの生活で疲弊していました。家族を亡くし恋人関係もうまくいかず、彼女自身も情緒不安定でひどいあり様です。

ですが村に行き祭が進むにつれて、ダニーはそういったしがらみから解放されてゆきます。ダニーの苦しみの叫びも喜びも村の人々が共有し、彼女と呼応します。ダニーにとっては救いとなった出来事だったに違いない。

我々には受け入れ難いものがダニーにとっては救いとすら受け取れる。こんなにも違うものがある人にとっては普通であるということが面白く感じられました。

 

 

あとペレの話。この話の中で彼が一番悪い。

友人を村にリクルートした、つまり生贄を仕入れてくる役を務めたわけです。彼は大学にいた期間もこの祭りのために友人を選んでいたのだろうか。

村はあまりに閉鎖的なため遺伝的に均質な集団になりやすくなります。そのため定期的に外部の血を取り入れる必要がある。そのために90年に一度外から人を招いて村の人間との間に子を持たせるのだ。

 

これは考えすぎかもしれないのですが、ダニーを村へ連れて行ったのはペレなんじゃないかとも考えました。ダニーがスウェーデン行きを決めたきっかけには彼女の妹の自殺と巻き込まれた両親の死がありました。もし、最初からペレがダニーをメイクイーンとして仕立てるために連れて行ったのだとしたら?ペレがダニーの家族を殺害した可能性があるのではないか。

 

ただ重要なのは、ペレにとって村のために外部の人を連れてくるのはあたりまえのことだろうということだ。彼にとって、彼らホルガ村の人たちにとってはなんら悪いことではない(はずである)。もちろん処罰や生贄のために人を殺めることも。

 

もしあの村に生まれていたら、あたりまえに夏至祭を遂行するだろうか?

きっとするだろう。

 

 

最後、ホルガ村に同調し始めたダニーは村の人と不誠実な恋人クリスチャンのどちらを生贄にするか2択に迫られ、クリスチャン生贄に選びます。死ねというわけです。ダニーは以前からクリスチャンの態度に不満を溜めていたし、クリスチャンが村の女性とあれなところを目撃してから心が決まったのでしょうね。

それが達成されて炎の中のクリスチャンを見てにやっとするダニー

最高でした。

 

監督は自身の失恋をこの映画に昇華したそう。

監督怖すぎでは(笑)最高か